写真:伊知地 国夫
2021年1~2月 せっけん膜の干渉色模様
せっけん膜を4mm四方ほどの小さな穴に張り、顕微鏡の対物レンズ越しに照明の光をあてて観察すると、せっけん膜の表と裏で反射した光が干渉して鮮やかな色彩が現れる。色の変化はどこを見ても階段状になっていて、膜の厚みが不連続に変わっていることを表している。せっけん分子が層状に積み重なって膜をつくっているためだ。1~2分ほどで膜はわれてしまう。わずかな時間だけ見ることができる不思議な光景だ。
2021年3~4月 蚊取り線香の煙
蚊取り線香などの煙が立ち上がるところを見ていると、時々くるくるっと渦ができることがある。そこで、渦の形を撮るために蚊取り線香を空気の流れが少ないところに置き、煙をまっすぐに立ち昇らせる。わずかな空気の流れで煙が揺らいだ瞬間、渦が発生する。フラッシュの光が横からあたるようにして、渦ができた瞬間を狙ってシャッターを切った。
2021年5~6月 ツユクサ
ツユクサ科の一年生植物。全国に分布し、夏に道端などに生育する。朝早く開き、午後にはしぼんでしまう。拡大して撮影すると実に面白い形をしている。よく目立つ青い花びら(2枚)とその下に白い1枚がある。黄色く目立つのはおしべで、3種類の形をしたおしべ6本とめしべ1本がある。単子葉類で葉脈が平行に並ぶ。葉の裏に多く分布する気孔の観察がしやすく、教材としても使われることも多い。
2021年7~8月 ラケットの重心の動き
卓球のラケットを指の先にのせ、傾かずに指先にのる場所(重心)をさがす。その位置に発光ダイオードと小さなコイン電池を貼り付けて点灯する。暗い場所で、カメラのシャッターを開けた状態でラケットを放り投げて光の動きを撮影すると、ラケットが回転してもダイオードの光はきれいな線(放物線)を描いているのがわかる。ラケットも写るように、フラッシュの光を1秒間に10回点滅させて同時に撮影すると、1枚の写真の中にラケットの回転の様子と重心の動きが写る。
2021年9~10月 音叉の振動
音叉を槌でたたくとU字型の部分が振動し、その動きが空気に伝わって音が聞こえる。音叉がどのぐらい振動しているかは、目ではわかりにくいので、音叉をたたいてから逆さにしてその先を静かに水面に近づけた。水面についた瞬間、激しく水しぶきが飛び散り、強く振動していることがわかる。水面にふれた瞬間にフラッシュを発光させて、水滴が飛び散る様子を撮影した。
2021年11~12月 水入り風船の破裂
ゴム風船に水を入れて、針で割った瞬間を撮影した。写真は、ゴム膜が裂けるときに水の表面をこすり、水が飛び散った瞬間だ。この後、ゴム膜がなくなっても水はすぐに形を変えることができないので、風船の形をした水の塊があらわれる。割れたときの音をマイクでとらえ、フラッシュを発光させて撮影する。音をとらえてから発光までのわずかな時間差を電子回路(遅延回路)で調節すると、割れ始めから水の塊が落ちるまでの、いろいろなタイミングを撮影することができる。